このページはPR・広告を含みます

スイスの600kWp営農型太陽光研究施設、買い手まで揃えた実証が日本の農地活用に示す視点

スイスの600kWp営農型太陽光研究施設、買い手まで揃えた実証が日本の農地活用に示す視点

ニュースの概要

スイスの電力会社Axpo、アールガウ州、有機農業の研究機関FiBLが、ズール市の農地で出力600kWpの営農型太陽光発電の研究施設の建設を始めた。畑では実際に営農を続けながら、作物づくりと発電が両立できるかを確かめる計画である。発電した電力は近隣の乳製品メーカーEmmiが全量を買い取り、自社の事業所で使う予定だ。発電事業者、電力の使い手、研究機関が近い距離に集まる点が特徴で、単に設備を置くだけでなく、土地、電力、研究を一つの枠組みにまとめた実証になっている。欧州では農地の確保とエネルギー転換の両立が課題になっており、その答えを探る試みとして位置づけられる。

引用元: スイスで600kWpの営農型太陽光発電研究施設を建設開始(energynews.pro)

分析・見解

発電と研究と買い手を一か所に集めた設計

今回の計画で目を引くのは、設備の大きさより枠組みの作り方である。600kWpは大規模な発電所と比べれば小さい。一般家庭の屋根なら150軒前後に相当する規模だ。しかし、電力会社、州、研究機関、そして電力の買い手がそろって動いている。

営農型太陽光発電は、これまで「発電側の都合で畑を使う」と見られがちだった。今回は研究機関が加わり、作物への影響を測ることが目的に組み込まれている。発電が主役ではなく、農業が主役の実験として設計されている点が大切である。

農地の光を分け合うという難しい課題

営農型では、パネルの下の作物に届く光が減る。光を取り過ぎれば収量が落ち、パネルを減らせば発電が伸びない。この綱引きが技術の核心である。

オーガニック農業の研究機関が関わる意味も大きい。化学肥料や農薬に頼らない栽培では、日陰の効果、土の乾き方、病気の出方が慣行栽培と違う可能性がある。パネルの下は強い日差しや雨をやわらげる面もあり、猛暑の年には作物を守る効果が期待される。一方で、農業機械の動線や害虫の発生など、現場でないと分からない点も多い。ここに実測データが積み上がることに価値がある。

全量買取という出口が先にあることの強み

発電した電力を近隣の乳製品メーカーEmmiが全量買う。小さな話に見えて、これは重要である。実証事業は、電気の売り先が曖昧なまま終わることが多い。出口が決まっていれば、採算の試算が現実的になる。

乳製品の工場は、冷却や殺菌で多くの電力を使う。昼間の需要が大きく、太陽光の発電時間と重なりやすい。近くで作って近くで使えば、送電のロスや託送料金(=送電網の利用料)も抑えられる。

日本の農地活用との違いはどこにあるか

日本でも営農型は増えている。ただ、話の中心は農地の一時転用許可と売電収入になりやすい。スイスの例は、研究機関と電力の使い手を最初から組み込んでいる点が違う。

私は、将来の競争力は発電量よりデータの信頼性にあると考える。誰が測り、誰が検証したかが分かる収量データは、金融機関や自治体が判断するときの根拠になる。設備を増やす前に、測る仕組みを整えた地域が次の段階で有利になるだろう。

ビジネスへの影響

農業法人や地主が最初に確認したい三つの点

営農型の導入を考えるなら、まず収量の基準を決める。パネルのない隣の畑と比べ、何割まで落ちたら許容できるかを事前に決めておく。次に、作物の選び方である。日陰に強い葉物や、猛暑に弱い作物は相性がよい場合がある。最後に、農業機械が通れる高さと間隔である。後から変更すると費用が大きくなる。

電力を使う企業にとっての調達の新しい選択肢

食品や飲料のメーカーにとって、近隣の農地から電力を買うことは、脱炭素の取り組みを原料調達の物語と結びつける利点がある。Emmiのように使う電力を地元の農地で作れば、取引先の農家との関係も深まる。日本でも、工場近くの農地と組む長期契約(=10年以上の電力購入契約)は検討に値する。ただし、全量を買うと価格が固定されやすい。電気料金が下がった場合の損得を、契約前に試算しておく必要がある。

自治体や金融機関が見るべき判断材料

自治体は、研究機関の測定データがある案件を優先して支援すると、失敗のリスクを下げやすい。金融機関も、収量データと売電先の契約が揃った案件なら審査しやすい。小さな実証でも測定方法を公開すれば、他の地域が再利用できる。まず1ヘクタール未満で測り、翌年に広げる段階的な進め方が現実的である。

関連記事

← ブログ一覧へ戻る