営農型太陽光発電設備のある農地で書類を確認する担当者たち

制度と農地転用許可

農地法・一時転用許可・FIT/FIP――営農型太陽光発電を支えるルールの現在地

農地法と一時転用許可の基本枠組み

営農型太陽光発電は、農地法に基づく「農地の一時転用許可」を得て設置します。転用の対象は支柱の基礎部分のみで、農地全体を転用する野立て太陽光発電とはまったく異なる制度枠組みの上に成り立っています。

日本の農地は農地法によって厳格に守られており、優良農地を発電用地へ恒久転用することは原則として認められていません。そこで営農型太陽光発電では、パネルを支える支柱の基礎部分についてのみ、期間を区切った一時転用許可を取得するという法的構成が採用されました。下部の農地はあくまで農地のまま維持され、営農の継続が許可の絶対条件となります。

許可権者は原則として都道府県知事(4ヘクタール超は農林水産大臣に協議等)で、実務の窓口は市町村の農業委員会です。申請にあたっては、発電設備の設計図書に加えて、下部農地で誰が何を栽培し、どの程度の収量を見込むのかを記した営農計画書の提出が求められます。この営農計画の実現性・継続性が審査の中心であり、「発電のついでに形だけ営農する」計画は許可されない建て付けになっています。再生可能エネルギーの導入拡大と農業経営・食料生産の維持を両立させるための、日本独自の制度設計と言えます。

制度の変遷――2013年の解禁から規制強化まで

営農型太陽光発電の制度は、この十数年で大きく姿を変えてきました。転機となる出来事を時系列で整理すると、業界が「普及促進」から「質の確保」へと政策の重心を移してきた流れが見えてきます。

  • 1981年長島彬氏がソーラーシェアリングのコンセプトを考案。光飽和点の理論に基づく「太陽光の分かち合い」を提唱しました。
  • 2012年再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)がスタート。売電収入の予見性が高まり、農地での発電への関心が急速に高まりました。
  • 2013年農林水産省が農地での支柱設置に関する一時転用許可の取扱いを通知(ガイドライン制定)。営農型太陽光発電が制度上正式に解禁され、導入が本格化しました。
  • 2018年担い手が営農する場合や荒廃農地を活用する場合について、一時転用許可期間が3年から10年に延長。事業の予見性が大きく向上しました。
  • 2022年FIP制度の運用開始。市場価格にプレミアムを上乗せする方式へと移行が始まり、発電事業者にも電力市場を意識した経営が求められるようになりました。
  • 2024年営農実態を伴わない不適切案件へのFIT交付金停止措置が報道され、規制強化の流れが鮮明になりました。
  • 2026年「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」を経て、モニタリング強化や根拠法令を農山漁村再生可能エネルギー法へ移す抜本的な制度改正案が公表されました。

このように、営農型太陽光発電の制度史は「解禁と普及の10年」から「健全化と再設計の局面」へ移行しつつあります。制度変更は収益計画に直結するため、参入を検討する事業者は最新の審査運用を常に確認する必要があります。

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許可要件の中心――単収8割基準と年次報告

一時転用許可の要件でもっとも重要なのが、下部農地の営農に関する基準です。具体的には、下部農地における単収(単位面積あたり収量)が、同じ年の地域の平均的な単収と比較しておおむね8割以上を維持することが求められます。加えて、生産された農作物の品質に著しい劣化が生じていないことも確認されます。

営農状況は毎年、農業委員会へ報告する義務があります。報告には収穫量や作業記録、圃場の写真などを添え、必要に応じて現地確認が行われます。単収が8割を下回った場合は、その原因と改善策の報告が求められ、改善が見られない場合には許可の更新が認められない、あるいは許可取り消しと設備撤去の指導につながる可能性があります。

さらに、許可期間満了時に設備を撤去して農地に復元できることを担保するため、撤去費用の見積もりと資力の証明を求められるのが一般的です。支柱の基礎はコンクリートを最小限に抑えた構造とし、撤去後にすみやかに耕作可能な状態へ戻せることが設計段階から要求されます。こうした要件はすべて、「農地はあくまで食料生産の基盤である」という農地法の理念を反映したものであり、営農型太陽光発電が単なる発電事業と一線を画す理由になっています。

許可要件の三本柱:(1)地域平均比8割以上の単収維持、(2)毎年の営農状況報告、(3)期間満了時の撤去・原状回復の担保。この3つを満たし続けることが事業継続の絶対条件です。

3年許可と10年許可――どちらを目指すか

一時転用許可の期間には3年と10年の2種類があり、どちらが適用されるかは事業の担い手と農地の性格によって決まります。10年許可の対象となるのは、認定農業者などの「担い手」が下部農地で営農する場合、荒廃農地を再生利用する場合、そして第2種農地・第3種農地を活用する場合です。それ以外は3年ごとの更新となります。

項目10年許可3年許可
主な対象担い手による営農、荒廃農地の再生、第2種・第3種農地上記以外の一般的な案件
事業の予見性高い(金融機関の融資評価も有利)更新リスクが残る
更新手続き10年ごと3年ごとに営農実績を審査
政策的な位置づけ優良事例として推進営農実態の確認を重視

10年許可は、20年間のFIT買取期間に対して更新回数が少なく済むため、金融機関からの資金調達においても有利に働きます。逆に3年許可の案件は、更新のたびに営農実績が厳しく確認されるため、単収8割基準を安定して満たす営農体制の構築が欠かせません。荒廃農地や耕作放棄地を再生して10年許可を得るルートは、農地確保とファイナンスの両面でメリットが大きく、近年の新規案件の主流になりつつあります。

FIT・FIP制度と売電価格の動向

営農型太陽光発電の収益を支えてきたのが、固定価格買取制度(FIT)です。FITは発電した電気を一定価格で20年間買い取る制度で、制度開始当初の2012年度には10kW以上で40円/kWhという高い買取価格が設定されていました。その後、太陽光発電のコスト低下に伴い買取価格は毎年引き下げられ、近年の事業用太陽光は10円/kWh前後の水準まで低下しています。

現在は、市場価格に一定のプレミアムを上乗せするFIP制度への移行が進んでおり、一定規模以上の新規案件はFIPが基本となっています。FIPでは電力市場の価格変動リスクを事業者が負う一方、蓄電池の併設や需要家との直接契約(コーポレートPPA)によって収益を高める余地が生まれます。営農型太陽光発電でも、FIT依存から脱却し、自家消費や地域内での電力供給を組み込んだ事業設計へのシフトが着実に進んでいます。

なお、FIT認定における「特定営農型」の区分では、一定の条件を満たす営農型案件に対して運転開始期限などの優遇措置が設けられてきましたが、営農実態を伴わない案件への交付金停止措置に見られるように、制度の運用は年々厳格化しています。売電単価の低下と規制の厳格化という二重の環境変化が、業界の事業モデルを「売電偏重」から「農業経営との真の両立」へと転換させる原動力になっています。

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2024年以降の規制強化と2026年制度改正の行方

2024年以降、営農型太陽光発電の制度は明確に「厳格化」へ舵を切りました。背景にあるのは、パネル下の営農が事実上放棄されていたり、収穫実態のない形だけの栽培が行われていたりする不適切案件の存在です。経済産業省によるFIT交付金の停止措置はその象徴であり、農林水産省もガイドラインの運用を厳しくし、営農状況のモニタリングを強化しています。

そして2026年、農林水産省の「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」の議論を踏まえた抜本的な制度改正案が公表されました。改正案の柱は、(1)営農状況のモニタリング体制の強化、(2)新規案件の根拠法令を農地法の一時転用から農山漁村再生可能エネルギー法の枠組みへ移行すること、(3)地域との調和や優良事例の認定を通じた健全な普及の促進、とされています。市町村が策定する基本計画のもとで案件を管理する方向性は、地域主導型の再生可能エネルギー政策とも整合するものです。

制度改正は既存事業者・新規参入者の双方に大きな影響を与えます。とりわけ新規案件は、自治体・農業委員会・地域の農業者との合意形成がこれまで以上に重要になる見込みです。一方で、ルールが明確化されることで優良事業者にとっては競争環境がむしろ改善するという見方もあります。制度の詳細設計は今後も動くため、農林水産省・資源エネルギー庁の公表資料を継続的に確認することをおすすめします。詳細な課題の構造は課題:優良事例と不適切事例のページで、収益への影響は収益モデルと投資回収のページで解説しています。