太陽光パネルの下でブルーベリーを収穫する農家の様子

適した作物と営農実績

単収8割基準を満たす作物選定と、下部農地の営農戦略

作物選定の考え方――陽性・半陰性・陰性で整理する

営農型太陽光発電の成否は、下部農地でどの作物を育てるかでほぼ決まると言っても過言ではありません。作物選定の出発点は、光の必要量による「陽性作物・半陰性作物・陰性作物」という分類です。

陽性作物は強い日射を好む作物で、水稲、大豆、麦、トマト、スイカなどが代表例です。光飽和点が高いため遮光の影響を受けやすく、遮光率を30%以下に抑えた設計が基本になります。半陰性作物は適度な日陰でも育つ作物で、ブルーベリー、茶、ほうれん草、レタス、いちごなどが該当します。遮光率40%前後まで許容できるものが多く、ソーラーシェアリングとの相性が良いグループです。陰性作物は直射日光を嫌う作物で、ミョウガ、フキ、ニラ、サカキ(榊)、原木しいたけなどが代表です。むしろ遮光によって品質が向上する場合すらあり、営農型太陽光発電にもっとも適した作物群とされています。

ただし、この分類はあくまで出発点です。同じ作物でも品種や地域の気候、土壌条件によって遮光への耐性は変わります。実際の営農計画では、地域の普及指導センターや先行事例のデータを参照しながら、圃場ごとの条件に合わせて作物と遮光率の組み合わせを検討することが欠かせません。

主要作物の栽培実績――水稲・大豆・露地野菜

全国の導入実績を見ると、下部農地の作物として選ばれているのは意外にも陽性作物である水稲や大豆が少なくありません。日本の農地の過半を水田が占めるため、既存の稲作経営に発電を組み合わせるパターンが自然だからです。出光興産が千葉県木更津市で行った実証では、可動式架台によって日射をコントロールし、野立て設備と同等の発電量を確保しながら、米の収量・品質ともに問題がないことが確認されました。

水稲の場合、遮光率を20〜30%程度に抑えた設計であれば、単収8割基準を安定的にクリアできるという実績が各地で積み上がっています。むしろ近年の猛暑では、適度な遮光が高温障害による白未熟粒の発生を抑え、品質面でプラスに働いたという報告もあります。大豆や麦などの土地利用型作物も、機械作業に対応した高い架台と広い支柱間隔を確保すれば、既存の作業体系を大きく変えずに営農を継続できます。

露地野菜では、さといも、ねぎ、キャベツ、ばれいしょなど幅広い品目で栽培実績があります。共通するポイントは、支柱の配置に合わせて畝の方向と作業動線を設計し、トラクターや管理機の旋回スペースを確保しておくことです。作業性を軽視した設計は、営農コストの増加や単収低下に直結するため、設備設計と営農計画を一体で検討することが重要です。

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高付加価値作物への転換――ブルーベリー・榊・きのこ・茶

営農型太陽光発電を機に、より収益性の高い作物へ転換する動きも活発です。その代表格がブルーベリーです。半陰性で遮光と相性が良く、観光摘み取り園として販売単価を高められるため、「ソーラーシェアリング×ブルーベリー観光農園」は全国で広がる定番の組み合わせになりました。パネルが雨よけや鳥害対策の骨組みを兼ねる設計もあり、設備と営農の相乗効果が生まれやすい作物です。

神事に使われるサカキ(榊)やシキミも注目株です。もともと山林の木陰で育つ陰性の樹木であるため高い遮光率でも生育し、国内需要の大半を輸入に頼っている現状から国産品の販路も確保しやすいという事業環境があります。同様に、原木しいたけをはじめとするきのこ類は遮光率70%前後でも栽培可能で、パネルがきのこ栽培に必要な日陰をつくる資材として機能します。耕作放棄地に近い条件の悪い農地でも取り組みやすい点が評価されています。

茶は半陰性で、被覆栽培によって旨味成分を高める「かぶせ茶」の技術と遮光が親和的です。このほか、薬用作物、花き、ワイン用ぶどうなど、単価の高い作物との組み合わせが各地で試されています。売電収入という安定キャッシュフローがあるからこそ、単収は低くても単価の高い作物へ挑戦できるという側面もあり、営農型太陽光発電は農業経営の作物転換を後押しする装置としても機能し始めています。

単収8割基準と生育データの実際

制度面から見ると、作物選定の最終判断基準は「地域平均比8割以上の単収を維持できるか」に尽きます。先行事例の生育データからは、適切な遮光率設計のもとであれば多くの作物でこの基準を満たせることが示されています。以下は、公表されている実証・導入事例に基づく、下部農地の単収水準のイメージです。

下部農地の単収水準の例(地域平均=100とした場合のイメージ)
水稲(遮光率約30%)
85〜100
大豆(遮光率約30%)
80〜95
さといも(半陰性)
90〜105
ミョウガ(陰性)
100超も
基準ライン(8割)
80
※各種公表事例に基づく水準のイメージであり、品種・気象・管理水準により変動します。

注意すべきは、単収は年による変動が大きいという点です。天候不順の年に地域平均も下がれば相対的な基準はクリアしやすくなりますが、パネル下特有の要因(雨がかりの偏り、支柱際の生育ムラなど)で単収が落ちるリスクは常に存在します。かん水設備の整備や土づくりといった基本的な栽培管理への投資が、結果として発電事業全体のリスクを下げることになります。

営農計画のポイント――誰が・何を・どう売るか

営農型太陽光発電の営農計画で問われるのは、作物の選定だけではありません。「誰が耕作するのか」「収穫物をどこへ販売するのか」という営農体制と販路の設計が、許可審査でも事業運営でも重要になります。

営農の担い手としては、農地所有者本人、地域の認定農業者や農業法人への委託、発電事業者が設立した農業法人による直営などのパターンがあります。10年許可を狙うのであれば、認定農業者など担い手の関与が条件となるため、地域の農業者との連携体制づくりが計画の核心になります。委託の場合は、営農費用の負担、単収未達時の責任分担、長期の耕作継続の担保などを契約で明確にしておくことが不可欠です。

販路については、既存の出荷ルート(JA・市場)に加えて、直売所、観光農園、契約栽培、加工品化など、単価を高める工夫が営農収支を大きく左右します。ブルーベリーの摘み取り園や榊の神社向け直販のように、作物選定と販路設計をセットで構想した事例ほど収益性が高い傾向があります。売電収入があるからといって営農を「コストセンター」と捉えるのではなく、農業経営そのものの競争力を高める視点が、長期20年の事業を支える土台になります。

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失敗しやすい作物と留意点

一方で、営農型太陽光発電には「選んではいけない作物」も存在します。典型例は、光飽和点が高く遮光にきわめて敏感な作物を、発電量重視の高遮光設計と組み合わせてしまうケースです。トマトやスイカなどの果菜類を高遮光率の下で栽培し、糖度不足や収量低下に陥った事例が報告されています。また、背丈が高くなる果樹をパネル下に植え、成長後に枝がパネルと干渉して管理不能になった例もあります。

もうひとつの典型的な失敗は、「手間がかからない」という理由だけで選ばれた作物です。管理の粗放な牧草や観賞用植物を名目的に植え、収穫・販売の実態が乏しい案件は、営農実態なしと判断されて許可更新が認められないリスクが高まっています。2024年以降の規制強化の流れの中では、収穫物の出荷記録や販売実績を示せることが、これまで以上に重要になっています。

作物選定の失敗は、設計変更や改植に多大な費用がかかるため、事後のリカバリーが難しい領域です。計画段階で、(1)地域の気候・土壌との適合性、(2)遮光率との整合、(3)作業動線と機械化適性、(4)販路と収支見通し、(5)単収8割基準の達成可能性、の5点を必ず検証することをおすすめします。作物ごとの収支の考え方は収益モデルと投資回収のページで、実際の成功事例は導入事例のページで詳しく報告しています。