農地で営農型太陽光発電の鋼製架台を組み立てる施工作業員たち

資材・施工業者の動向

架台・パネル・施工・O&M――営農型太陽光発電を支える供給サイドの現在

架台メーカーの動向――藤棚式から可動式・追尾式へ

営農型太陽光発電の資材でもっとも特徴的なのが架台です。農作業空間を確保する高床構造、遮光率を制御するパネル配置、そして撤去可能な基礎という営農型特有の要件が、専用架台という独自の市場を生み出しました。

普及初期の主流は、単管パイプを組んだ簡易な藤棚式架台でした。コストを抑えられる反面、強度計算や耐久性に課題のある案件も見られたことから、現在は溶融亜鉛めっき鋼やアルミ合金を使った専用設計の架台が標準になりつつあります。細幅パネルを疎らに配置する従来型に加え、通常サイズの両面受光型パネルに対応した高強度架台、支柱間隔を広げて大型農機の作業性を高めた架台など、営農体系に合わせた製品ラインアップが充実してきました。

技術面の最前線にあるのが、パネルの角度を変えられる可動式・追尾式架台です。出光興産が実証を進める自動追尾型システムのように、太陽の動きに合わせてパネルを制御することで、発電量を最大化しながら作物への日射も確保する製品が登場しています。台風接近時にはパネルを水平や垂直に退避させて風荷重を逃がすなど、防災面の機能も組み込まれており、架台は単なる構造物から「農業と発電を最適化する制御装置」へと進化しています。

パネルの選定――両面受光・軽量型・ペロブスカイト

太陽光パネルの選定でも、営農型ならではの観点があります。従来は影を分散させやすい細幅モジュールが定番でしたが、近年は発電効率の高い大判の両面受光型(バイフェイシャル)パネルを採用する設計が増えています。両面受光型は、地面からの反射光を裏面でも受けて発電するため、高い架台に設置する営農型と相性が良く、下部農地の反射条件によっては発電量を数パーセント上乗せできます。

注目を集めているのが、軽量で柔軟性の高い次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」です。ガラス基板の結晶シリコンパネルに比べて大幅に軽いため、架台の部材を細くでき、資材コストと施工コストの低減が期待できます。また、フィルム状の特性を活かしてビニールハウスの屋根面や曲面への設置も視野に入り、施設園芸と発電の一体化という新しい市場を切り拓く可能性があります。国内メーカーによる量産化が進む2020年代後半には、営農型太陽光発電の設計自由度を大きく広げると見込まれています。

このほか、農地の畝間にパネルを垂直に立てる「垂直設置型」向けの両面受光パネルも登場しています。上空を覆わないため遮光の影響を最小化でき、朝夕に発電ピークが分散する特性は電力系統への負荷軽減にも寄与します。作物・圃場条件・電力需要のパターンに応じて、パネルと設置方式の組み合わせを選ぶ時代に入ったと言えます。

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施工業者の業界構造――専門ノウハウが参入障壁に

営農型太陽光発電の施工は、一般の太陽光発電施工と比べて特殊性が高い分野です。軟弱な農地地盤への基礎工事、高所での架台組立、営農スケジュールに合わせた工期調整、そして下部農地を傷めない重機運用など、農業と土木の両方にまたがるノウハウが求められます。このため、施工実績のある専門業者は全国でも限られており、経験豊富な業者の確保が案件推進のボトルネックになることもあります。

業界構造としては、(1)営農型専業のEPC(設計・調達・施工)業者、(2)野立て太陽光から営農型に進出した施工会社、(3)架台メーカーが施工まで一貫で請け負うパターン、(4)地域の電気工事店と農業土木業者の協業、といったプレイヤーが混在しています。近年は、開発から施工、O&M、営農支援までをワンストップで提供する事業者が競争力を高めており、「発電設備を売る」ビジネスから「営農型発電事業の成功を請け負う」ビジネスへの転換が進んでいます。

大手企業の本格参入も供給サイドを変えつつあります。クボタのような農機メーカーの参入は、農業機械との干渉を考慮した設備設計や営農管理システムとの連携など、農業側の知見を組み込んだソリューションの普及を後押しすると期待されています。施工品質のばらつきという業界課題に対して、大手の品質管理基準が事実上の標準として波及する効果も見込まれます。

資材価格の推移とコスト構成

営農型太陽光発電のコスト環境は、この数年で大きく揺れ動きました。世界的なインフレと円安により、鋼材価格やパネル輸入価格が上昇し、2022〜2023年頃には施工費を含むシステム単価が一時的に上振れしました。その後、パネルの国際価格は供給過剰により大幅に下落し、パネル調達コストは低下傾向にありますが、鋼材と人件費(施工費)の高止まりが続いており、トータルのkW単価は野立ての約1.3〜1.5倍という構造は変わっていません。

営農型太陽光発電の初期コスト構成イメージ(50kW低圧案件)
架台・支柱・基礎
約30%
太陽光パネル
約25%
電気設備・パワコン
約20%
施工・工事費
約18%
設計・申請ほか
約7%
※案件条件により変動します。営農型は架台比率が野立てより高いのが特徴です。

コスト低減の方向性としては、架台の標準化・プレハブ化による部材と工数の削減、軽量パネルの採用による架台のスリム化、複数案件の資材一括調達などが進められています。将来的にペロブスカイト太陽電池が実用価格に達すれば、営農型のコスト構造は根本から変わる可能性があり、資材メーカー各社は次世代製品の開発競争を加速させています。

O&M(保守管理)市場の拡大

累計6,137件・1,362ヘクタールというストックの積み上がりは、O&M(オペレーション&メンテナンス)という継続市場を生み出しています。営農型太陽光発電のO&Mは、パワコンや配線の電気保安、パネル洗浄・点検といった一般的なメニューに加えて、営農型特有の項目が加わるのが特徴です。

具体的には、支柱際の除草管理、農作業による設備損傷の点検、塩害・農薬散布への対策、そして営農状況報告に必要な生育記録の支援などです。近年は、発電量の遠隔監視と圃場センサーを組み合わせ、発電と営農の両方をひとつのダッシュボードで管理するサービスも登場しており、O&Mは「設備の維持」から「事業全体の運営支援」へと役割を広げています。ドローンによる上空からのパネル点検と生育診断を同時に行うサービスなど、営農型ならではの複合メニューも生まれています。

また、2024年以降の規制強化により、営農モニタリングの証跡管理がO&Mの重要業務になりつつあります。単収データの記録、圃場写真の定期撮影、報告書類の作成支援といった「コンプライアンスO&M」の需要は、制度改正後にさらに拡大すると見られ、施工後のストックビジネスとして資材・施工業者の収益源に育ちつつあります。

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施工品質と安全基準――強風・積雪への備え

営農型太陽光発電の施工品質は、事業の安全性と地域の信頼に直結します。高さのある架台は風荷重の影響を受けやすく、台風による倒壊やパネル飛散は人身・農作物への被害だけでなく、業界全体の社会的信用を損なう重大事故になります。設計段階では、建築基準法や JIS規格に準拠した構造計算に基づき、地域の基準風速・積雪条件に応じた部材選定と基礎設計を行うことが不可欠です。

過去には、強度不足の簡易架台が台風で倒壊した事例が報告されており、資源エネルギー庁や業界団体は設計・施工の技術基準の周知を進めてきました。FIT/FIP認定設備には電気事業法に基づく技術基準への適合が求められ、50kW未満の小規模設備でも基礎・構造の審査が厳格化される方向にあります。施工業者選定の際には、営農型の施工実績、構造計算書の提示、竣工後の定期点検体制の3点を確認することが、事業者側のリスク管理の基本とされています。

供給サイドの成熟は、営農型太陽光発電が一過性のブームではなく産業として定着するための土台です。架台・パネル・施工・O&Mの各分野で専門性と品質基準が確立されつつある現在の動きは、業界の健全な成長を支えるインフラ整備の段階と位置づけられます。技術革新の先にある市場の姿は、将来展望のページで詳しく報告します。