ニュースの概要
農林水産省は10月9日、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に関する省令の改正と告示を公布した。これまで制度の運用は、通達という行政内部の指針が中心だった。今後は省令・告示という、法令に近い形で基準が定められる。施行は2027年4月の予定である。農地の上にパネルを並べながら作物をつくり続ける事業について、許可の判断や、営農が実際に続いているかの確認が、より厳しく行われる方向だ。農業者と発電事業者には、作付け計画、収量の確保、設備の撤去といった責任を、これまで以上に明確に示すことが求められる。
引用元: 営農型太陽光発電の新制度、2027年4月施行へ(AGRI JOURNAL)
分析・見解
通達から省令・告示へ、変わるのは基準の重み
通達は、国が自治体に向けて出す運用の指針である。法令ほどの拘束力はなく、現場の解釈に幅が出やすい。営農型太陽光発電は、2013年に農地の一時転用許可の考え方が示されて広がった。以後の細かな運用は、長く通達の改正で積み上げられてきた。
省令や告示に移ると、基準は公式な法体系の中で明文化される。変更の手続きも重くなる。自治体の担当者にとっては、判断の拠り所がはっきりする利点がある。一方で申請する側は、「他の県では通った」という説明が使いにくくなる。
問われるのは、パネルの下で農業が続いているか
現行の運用では、パネル下の収量が地域の平均的な収量の8割以上であることが目安とされる。許可の期間は原則3年で、担い手が営農するなどの条件を満たせば10年となる。発電が主で農業が従、という逆転を防ぐための仕組みだ。ただ実際には、報告が形式的になりがちだという指摘もあった。
今回の見直しで確認が厳しくなれば、書類上の作付け計画だけでは足りなくなる。作業記録や収量の実績が必要になる。ここに構造的な難しさがある。売電のデータは発電事業者が細かく持っている。しかし収量のデータは、農業者の手元にある。両者がデータを共有する仕組みを持たない事業は、確認の段階でつまずきやすい。
農地を使う発電に、厳しい視線が向く背景
太陽光発電は、屋根や工場跡地だけでは設置場所が足りない。そこで農地の活用が期待されてきた。ただ、メガソーラー(=大規模な太陽光発電所)をめぐっては、景観や土砂災害への不安から、各地で住民の反対や条例による規制が増えている。営農型は「農地を守りながら発電する」例外として認められてきた経緯がある。信頼が崩れれば、制度全体が疑われかねない。
つまり今回の厳格化は、営農型を締め出す動きとは限らない。制度を長く使える状態に保つための選別、と読むほうが実態に近い。収量を守れる事業者や、撤去の責任を果たせる事業者には、むしろ追い風になり得る。
作物の選び方で、営農型の実力差が表に出る
この制度変更で最も差がつくのは、パネルの設計よりも作物の選び方だろう。日陰に比較的強い作物と、光を多く必要とする作物とでは、パネル下での収量の落ち方がまるで違う。基準が厳しくなるほど、先に作物を決め、そのあとでパネルの高さや間隔を決める順序が重要になる。発電設備を先に決めて、後から作物を探す進め方は、続けにくくなる。
新規の案件は、審査が慎重になる分、数が絞られる可能性がある。既存の設備が新制度へどう移行するかは、経過措置の内容を確認したい。
ビジネスへの影響
農業者が施行前に整えたい記録と契約の中身
作付け計画は、作物名だけでなく、面積、植え付けの時期、目標とする収量まで書ける形にしておく。毎年の収量は、パネル下の畑と近隣の通常の畑とで並べて記録する。日々の作業も、日付と写真つきで残したい。これらは、許可の更新や確認のときに、営農が続いている証拠になる。
発電事業者との契約では、収量が基準を下回った場合の対応を決めておく。パネルの角度の調整や一部の撤去にかかる費用を、どちらが負担するのか。農地の借り手や設備の持ち主が変わる場合の引き継ぎは、どうするのか。ここが曖昧だと、許可を失ったときに農業者が損を負う。
発電事業者と金融機関が見直す採算の前提
発電事業者は、事業計画に、審査の長期化と営農支援の費用を織り込む。農業の専門家や地元の農家と組む体制づくりは、余計な出費ではなく、許可を得て続けるための投資と考えたほうがよい。撤去の費用は、設置の段階から積み立てる設計が望ましい。
融資する金融機関にとっても、許可が続くかどうかは返済の前提になる。許可が取り消されれば売電が止まるからだ。審査では、営農の実績と撤去資金の手当てを確かめる項目が増えるだろう。
施行までに、条文と経過措置を読み込む手順
まず、公布された省令と告示の条文を入手し、現在の許可条件との差を表にまとめる。次に、経過措置(=新ルールへ移るまでの猶予の決まり)を調べ、既存の許可案件がいつ新基準の対象になるかを確かめる。最後に、管轄の自治体や農業委員会へ、確認書類の様式と提出の頻度を問い合わせる。この三つを施行前に済ませておけば、直前に慌てる必要は減る。