ニュースの概要
Jリーグと水戸ホーリーホックは10月23日、茨城県内で営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の共同視察会を開いた。行政、企業、団体の関係者ら約50人が参加した。見学先は、クラブが進めるGXプロジェクトの一つ「グラスルーツファーム太陽光発電所」である。太陽光パネルの下ではニンジンやサツマイモが育てられており、参加者は収穫を体験しながら、農業と発電を一つの土地で両立させる仕組みを確かめた。開催報告は、大規模な森林伐採の問題を意識した内容にもなっている。サッカークラブが畑と発電所を持ち、地域の関係者を招いて見せる。試合の外側で、地域の土地とエネルギーの使い方を示した取り組みといえる。
引用元: Jリーグと水戸ホーリーホック、ソーラーシェアリング共同視察会を開催(Mito Hollyhock)
分析・見解
パネルの下で作物を育てる方式が持つ二重の強み
ソーラーシェアリングとは、農地の上に支柱を立て、間隔をあけて太陽光パネルを並べる方式である。農業と発電を同じ土地で両立させる(=一つの畑で二つの収入を得る)ことが狙いだ。日光の一部をパネルが受け、残りが作物に届く。農家は売電による収入を足せるので、耕作放棄地が増える流れに歯止めをかけやすい。
日本は平地が少なく、再エネを置ける場所に限りがある。すでに人が使っている農地を二重に活用する発想は、土地不足への現実的な答えになる。ただし、どんな作物でも育つわけではない。強い日差しを必要としすぎないニンジンやサツマイモのような作物は、相性を試しやすい。今回の収穫体験は、その相性を参加者が手で確かめる場になった。
森を切らずに再エネを増やす道筋という意味
近年は、大規模な太陽光発電所(メガソーラー)のために山林が切られ、土砂災害や景観への不安が各地で語られてきた。再エネそのものへの反発に広がった地域もある。営農型は、新たに森を切らず、すでに耕している土地を使うので、こうした対立をやわらげやすい。
ただし、発電が目的になってしまえば意味は薄れる。農地に設備を置くには転用の許可が必要で、数年ごとの更新と、毎年の営農状況の報告が求められる。作物の出来が悪い状態が続けば、許可を失うおそれもある。畑が主役で発電は脇役という順序を守れるかが、地域の信頼を左右する。
小さなクラブが地域の土地と人脈で勝負する意味
Jリーグは社会連携活動「シャレン!」を進め、クラブを地域の担い手として位置づけている。スタジアムは試合日に多くの人を集め、電気も多く使う。そのクラブが自ら発電と農業に関わると、応援してくれる地域に何を返すのかを、具体的に説明しやすくなる。
水戸ホーリーホックは、資金力で大都市のクラブに勝つタイプではない。その代わり、地元の農地、農家、自治体とのつながりという資産がある。スタジアムの屋根にパネルを載せる方法は面積に限りがあるが、畑を使えば規模を広げられる。大きな資本がなくても、土地と人脈で脱炭素に貢献できる。これは小規模クラブの新しい強みの出し方として、他のクラブにも参考になる。
見せる場づくりが次の事業を生む条件と限界
行政、企業、団体の約50人が同じ畑に立てば、専門用語の説明より速く理解が進む。収穫した野菜を手に持った人は、設備への抵抗感も薄れる。視察会は、営業の場であり、合意づくりの場でもある。
一方で、実際に事業を再現するには、発電量、作物の収量、収支といった数字が欠かせない。雰囲気の良い見学で終わらせず、数字を公開して他地域が検証できる形にできるかが、今後の分かれ目になる。今回の取り組みが一つのクラブの活動にとどまらず、全国のクラブや自治体の標準的な型になるかが問われる。
ビジネスへの影響
農地を持たない企業にも開かれた三つの関わり方
自社で農地を持たなくても、関わる道はある。第一は、電力の長期購入契約(=発電所から決まった価格で電気を買う契約)を結び、再エネ電力を調達する方法だ。第二は、地元の農家や発電事業者と組み、設備投資や販路づくりの一部を担う方法である。第三は、社員研修や取引先との交流として、収穫体験を取り入れる方法だ。まずは第三から始めれば、費用を抑えて現場を知ることができる。
導入前に確かめたい許可・収益・営農の三点
営農型を検討するなら、最初に農地の転用許可と、地元の農業委員会(=農地を管理する市町村の機関)の見解を確認したい。次に、売電収入と設備費の見通しを、パネル下の作物の収量が下がる場合も含めて試算する。収量が落ちても事業が成り立つ計画でなければ、長続きしない。また、売電の制度や単価は変わりうるため、数年先の見直しも織り込んでおく。
最後に、誰が毎日畑を耕すのかを決める。発電事業者と営農者の役割が曖昧な案件は、トラブルになりやすい。契約書で責任の範囲を明記しておきたい。
クラブとの連携を成果が数字で語れる形にする
スポーツクラブと組む価値は、地域住民との接点が広いことにある。試合会場での発信、子ども向けの体験、地元メディアへの露出などは、企業単独では得にくい。ただし、ロゴを並べるだけの連携は、すぐに色あせる。再エネ電力の使用量、削減できた二酸化炭素の量、体験に参加した人数など、報告できる数字を最初に決めておく。それが社内の稟議(=承認の手続き)を通しやすくし、翌年以降の継続にもつながる。視察会に出た担当者は、名刺交換で終わらせず、一か月以内に次の打ち合わせを入れるとよい。熱が冷める前に動くことが、案件化の確率を上げる。