ニュースの概要
インド政府が、農地で作物を育てながら発電も行う営農型太陽光発電の普及に乗り出す方向だと報じられました。まず州政府に導入を促し、あわせて財政面の支援策も検討している段階です。対象となるのは、地上およそ3.5〜4メートルの高さにパネルを載せる方式です。トラクターなどの農機が下を通れ、作物にも光が届くように設計します。一方で、通常の地上設置型より建設費が25〜30%高く、これが広がりにくい最大の理由とされています。つまり今回の焦点は、技術そのものよりも、増える費用を誰がどう負担するかという制度づくりにあります。農業国であり、同時に太陽光の大量導入を進めるインドの動きは、土地利用の競合を抱える各国にも参考になります。
引用元: インド政府、営農型太陽光発電への支援策を検討(The Economic Times)
分析・見解
高さ4mの架台が生む、追加費用25〜30%の中身
営農型の費用が高くなる最大の理由は、パネルを支える鉄骨にあります。地上設置型は低い架台で済みます。これに対し、高さ3.5〜4メートルの構造は、風や雪の荷重に耐える太い柱と深い基礎が必要です。鋼材の使用量が増え、施工の手間も増えます。
さらに農機が通る間隔を確保するため、柱の本数を減らして梁を長くします。すると一本あたりの負担が増え、部材はさらに太くなります。報じられた25〜30%という差は、主にこの構造費の上乗せと考えるのが自然です。パネル自体の価格は変わりません。
「土地の取り合い」を解く、インド特有の事情
インドは国土の半分近くが農地です。大規模な太陽光を地上に並べれば、農地や牧草地と競合します。実際に、農家の反発で用地取得が難航する事例は各地で聞かれます。
営農型は、この対立を和らげる手段になりえます。農家は作物の収入に加え、発電収入や土地の賃料も得られます。灌漑ポンプの電力を自前でまかなえる利点もあります。電力が不安定な地域では、これが大きな意味を持ちます。
日本の先行例が示す、補助だけでは足りない理由
日本では営農型の導入が十数年前に始まり、農地の一時転用許可という仕組みで運用されてきました。許可は数年ごとの更新制で、下の作物の収量が大きく落ちれば、撤去を求められる場合もあります。つまり、設備費への補助だけでなく、農業をきちんと続けているかを確認する仕組みがセットで必要になります。
インドが補助を設計する際も、同じ問題が出ます。発電を目当てに農地へパネルだけを建て、作物は名ばかりという事態を防ぐ必要があります。支援を設備の設置時に一括で出すのか、営農の実績に応じて分割で出すのか。この設計次第で、制度の質が決まります。
独自の視点 作物の選び方が収益を左右する
高い架台の費用を回収するには、下の作物の価値も重要です。日陰に強い作物は、パネル下でも育ちやすいです。たとえば葉物野菜、生姜、ウコン、一部の豆類などです。逆に光を強く求める作物は収量が落ちます。
インドは香辛料や薬用作物の産地です。単価の高い日陰向き作物と組み合わせられれば、追加費用の重さを農業収入が補えます。補助金は、パネルの量ではなく、作物と発電の組み合わせの良さで差をつけるほうが、成果につながるはずです。
ビジネスへの影響
補助の設計が見えるまで、投資判断は二段階で
事業者にとって最大の不確実性は、補助の水準と条件です。現段階では、国が方針を示した段階で、金額や対象は未確定です。そのため、投資判断は二段階に分けるのが現実的です。まず、補助なしでも成り立つ小規模な実証から始めます。次に、制度が固まった時点で規模を広げます。
収益の試算では、建設費を25〜30%高く見積もり、そのうえで発電収入と作物収入の両方を足します。片方だけで採算を取ろうとすると、判断を誤ります。
鋼材・架台メーカーと農業側の連携が商機になる
費用差の大半が架台にあるなら、軽量で強い部材や、施工しやすい標準設計に価値が生まれます。鉄骨メーカー、基礎工事会社、パネル設置業者にとって、新しい需要です。
日本企業にとっても、営農型の運用ノウハウは輸出できる資産になりえます。たとえば、作物ごとの遮光率の設計、収量の確認方法、撤去基準を含む契約の雛形などです。現地の農業団体や州政府と組み、実証から入る形が現実的です。
農家側の窓口をどう作るかも要点です。設備を持つ会社と、土地を持つ農家の間で、収益の分け方を事前に明確にしておくと、後のトラブルを避けられます。