ニュースの概要
インド政府は、農地の上にパネルを高く掲げて発電しながら作物も育てる営農型太陽光発電(アグリボルタイクス)を、州政府に広げてもらうための新しい支援策づくりを進めている。再生可能エネルギー省の次官は、独立した制度にするか、近く発表予定の農業向け太陽光支援策「PM-KUSUM 2.0」の一部にするかを検討中だと明かした。高架型の設備は農作業と両立できる一方、通常の地上設置型より建設費が25%前後高くなるとされ、この差をどう埋めるかが制度設計の焦点になりそうだ。農地を電力に奪われる懸念と、農家の収入を増やしたい思惑の間で、国がどこまで関与するかが問われている。
引用元: インド政府、営農型太陽光発電の導入促進策を検討(Hindustan Times)
分析・見解
地上設置型より高い建設費が普及の壁になる
営農型太陽光の最大の弱点は、初期費用である。パネルを地上数メートルの高さに掲げるため、架台の鋼材が増え、基礎工事も深くなる。ニュースによれば、通常の地上設置型より建設費は25%ほど高い。
発電事業者から見れば、同じ土地で同じ電気を作るのに、わざわざ高い設備を選ぶ理由が弱い。補助がなければ、地上設置型が選ばれ続けるのは自然な流れである。今回の支援策は、この価格差を国が肩代わりする試みだと言える。
既存制度に組み込むか、単独で作るかの分かれ目
次官が示した二択には、それぞれ意味がある。PM-KUSUMは、農家に太陽光ポンプや小規模発電所を配る既存の枠組みである。ここに組み込めば、予算の仕組みや窓口をそのまま使えるため、立ち上がりは早い。
ただし、営農型は「農家の副収入」と「作物の収量」を同時に守る設計が要る。既存制度の延長では、発電量だけが評価され、農業の中身が置き去りになる恐れがある。単独制度なら、遮光率や作物の種類まで条件に入れられるが、準備に時間がかかる。
日本の営農型が示す、導入後に起きる問題
日本では2013年に農林水産省が農地の一時転用許可の考え方を示し、営農型の導入が始まった。その後、許可を受けた案件は数千件規模に増えた。一方で、パネルの下で作物がほとんど育たず、発電だけが続く事例も報告され、行政が営農状況の確認を厳しくした経緯がある。
インドは、この失敗の先例を参照できる立場にある。国土が広く、州ごとに農地制度も違うため、同じ問題はより大きな規模で起きうる。補助金を出す前に、作物の収量を測る仕組みを組み込めるかが成否を分ける。
水と日差しが足りない土地でこそ価値が出る
独自の視点として強調したいのは、インドでは営農型が節水の道具にもなりうる点だ。乾燥地では、強い日差しで土の水分が奪われ、灌漑の負担が重い。パネルが日陰を作れば、蒸発が減り、一部の作物では水の使用量が下がる。
パネルの清掃用の水を雨水ためとして集めれば、農家は電気と水の両方を得られる。電力だけを目的にした制度にしないことが、農家に受け入れられる条件になるだろう。
ビジネスへの影響
設備メーカーと施工会社に生まれる新しい需要
高架型の架台は、鋼材の強度や防錆処理に高い品質が求められる。インド政府が支援策を整えれば、架台メーカー、基礎工事の会社、農業機械との高さ調整を担う設計会社に、まとまった受注の機会が生まれる。
日本企業にとっては、日本の営農型で培った設計ノウハウが武器になる。トラクターが下を通れる高さや、作物ごとの遮光率の調整は、すでに蓄積がある領域だ。ただし、現地の気候や土壌に合わせた再設計は必須で、単純な輸出では通用しない。
事業を検討する企業が今すぐ確認すべき三点
第一に、制度が確定するまでは補助額も条件も動く。最終形が見えるまでは、資金を大きく固定せず、実証規模で現地農家と組む方が安全である。
第二に、売電収入だけで採算を組まないことだ。作物の収益、水の節約、農家への利用料を合わせた複数の収入源で試算しておけば、補助が減っても耐えやすい。
第三に、営農の実績を数字で記録する仕組みを最初から整える。日本でも、収量の証明ができない事業者は許可の更新で苦しんだ。記録は、補助を受ける際の証拠にもなる。