ニュースの概要
米国イリノイ州パクストン市の議会が、Lightstar Renewablesの開発する「Baltimore Drive Solar Project」について、市への編入に関する併合契約を承認した。約35エーカー(=東京ドーム3個分弱)の民有地に、交流出力4.95MWの地域共有型太陽光発電所を建てる計画である。パネルの列と列のあいだでは干し草を育てて刈り取り、発電と農業を同じ敷地で両立させる。パネルは太陽の動きに合わせて向きを変える単軸追尾式を採用する予定だ。小さな地方都市の手続きだが、農地と発電の共存という大きな課題を映している。
引用元: 米イリノイ州で農業と地域太陽光を併設する4.95MWプロジェクトが前進(Solar Power World)
分析・見解
干し草を選んだことが事業の現実味を高める
この計画でまず目を引くのは、栽培作物に干し草を選んだ点である。野菜や果樹は、パネルの影で収量が落ちるおそれがある。さらに、収穫や管理に人手と機械が要る。干し草は日陰にある程度強く、刈り取りも大型機械で済む。つまり、手間が少なく、設備の保守とも干渉しにくい。
発電事業者にとっても利点がある。パネルの下や周囲に雑草が伸びると、発電量の低下や火災の原因になる。草を計画的に刈れば、その管理費を減らせる。農業は飾りではなく、運用費の削減にも役立つ。
単軸追尾式が営農との相性を左右する
単軸追尾式とは、パネルを東から西へと一日かけて回転させる方式である。固定式に比べ、同じ面積でも発電量は一般に1〜3割ほど増える。朝夕の発電が伸びるため、電力の需要がピークを迎える夕方に出力を残しやすい。
また、回転式は列の間隔を広めにとる設計が多い。この余白が、作業機械を入れて草を刈る通路になる。固定式を地面近くに並べるより、営農と組み合わせやすい。ただし、可動部が増えるため、故障の点検費は上がる。この費用を電力収入で吸収できるかが鍵になる。
地域共有型という仕組みが反対運動を和らげる
コミュニティーソーラーとは、地域の住民や事業者が契約して、その電力の恩恵を分け合う仕組みである。屋根に設備を置けない世帯でも、再生可能エネルギーを利用できる。イリノイ州は州法で再エネの導入を後押しし、この種の事業に補助や買い取りの制度を用意している。
農地に大規模な発電所ができる計画では、「地元の畑がなくなる」という反発が起きやすい。米国中西部では、そうした理由で許可が止まった例も少なくない。農業を続ける設計と地域への還元を重ねれば、議会や住民の理解を得やすい。今回の併合契約の承認は、その成果の一つといえる。
営農型の広がりは土地利用のルール作りに左右される
米国では、羊を放牧する「ソーラーグレージング」や、花粉媒介昆虫のための草地を設ける事例も増えている。日本でも営農型発電の許可件数は年々伸びている。ただし、農地として認められるには収量の維持が条件になるため、撤去を求められる例もある。
今回のように、自治体が早い段階で契約を結び、用途と責任を明文化する流れは参考になる。技術の問題より、誰がどの土地を何のために使うかという合意づくりが、普及の速度を決めるだろう。
ビジネスへの影響
農業と発電を一つの収支で考える視点が要る
営農型の事業を検討する企業は、発電収入と農産物の売上を別々に見てはいけない。草刈りの費用削減、土地の賃料、補助金まで含めて、敷地全体の収支として試算するのが基本である。干し草のように単価は低くても手間が少ない作物は、全体の利益を押し上げることがある。
発電設備の追加費用は、追尾式なら増える。この費用が、発電量の上積みで何年で回収できるかを、事前に確認したい。
自治体との早期の約束が事業の止まる危険を減らす
反対運動や許可の遅れは、事業の最大の不確実要素である。計画の初期から自治体や地元農家と対話し、営農の継続、撤去後の原状回復、地域への電力還元を文書にしておくとよい。
農家や土地所有者にとっても、長期の賃貸契約に営農条件を入れることで、将来の土地の価値を守れる。日本の企業は、電力会社や農業法人との連携先を今のうちから探しておくと、制度が整った際に動きやすい。